貸借対照表(バランスシート/BS)を黒字化への道しるべに

売上が増えているのに資金繰りが苦しいー。こういった状況に陥っても、多くの経営者は決算書の「損益計算書(PL)」にばかり意識を集中し、「貸借対照表(BS)」を見ようとすることはありません。確かに、売上を伸ばせば利益が出るように思えます。しかしそれは、本当でしょうか?

損益計算書とは、企業のある期間における経営成績を表した財務諸表のひとつです。つまり、いくら売上があり、いくら経費を使い、最終的にいくら利益が出たかを示す資料です。損益計算書の数字は売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益からできており、引き算で簡単に計算できるため、直感的にも理解しやすいものです。

一方の貸借対照表とは、「資産」「負債」「資本(純資産)」を左右に対照で表示することにより、ある日時点の財務状態を表す財務諸表のひとつです。つまりどうやって資金を調達し、どうやって運用しているのかを示すものです。

損益計算書は計算上の利益である一方、貸借対照表は会社の資金の実態を表しています。たとえば損益計算書に計上される売上は増えても、実際に手元の現金が増えるわけではありません。よって損益計算書を見るだけでは、企業活動における現時点での経営の実情を読み取ることはできないのです。これまで損益計算書の数字ばかりを気にしてきた経営者は頭を切り替え、会社の財務実態を把握するためにも、貸借対照表を経営判断のベースにしていただきたいと思います。

貸借対照表を見ると、損益計算書ではわからなかった会社の実態を知ることができます。たとえば、利益を生まない不良債権の存在もわかります。経営に必要のない、あるいは利益を生み出していない資産があるということは、そこに投下した資金が眠っているということ。収益性を高め、利益を生みだす会社の体質をつくっていくためには、無駄な資産を放置しておく余裕はないはずです。損益計算書だけを見ていたり、売上だけを追い求めていたりすると、こういった不良債権を見つけることができなくなるのです。

また、在庫の見極めも重要です。仮に売上高と同額の在庫が資産の部に計上されているとすれば、明らかに過剰在庫です。適正在庫というのは業種により、経営方針によりまったく違いますので一概には言えませんが、おおむね3ヶ月を超える在庫を持っている場合は、月1回以上の棚卸を検討すべきです。その中で発見された不良在庫、滞留在庫については、早期に処分しなければなりません。

貸借対照表は、右側の負債資本(+純資産)でお金の調達を表し、資産という左側でお金の運用を表します。この貸借対照表の資産はたくさんあったほうがいいように思えますが、まったく逆です。

会社は、自己資本あるいは他人資本、または支払債務でお金を調達します。支払債務でお金を調達するということは、「債務」ですので、まだお金を支払っていないということ。支払いを債務として伸ばしているわけですから、支払うまでにそのお金を手元に置いておくことができます。これが支払債務でお金を調達しているということです。

調達したお金を、商品や人件費などさまざまなものに投下し、注文を受け、売上計上し、そして売掛債権になります。このように、資金と売上には密接な関係があります。

売掛債権、固定資産、商品、ソフトウェアなどなど、すべてが資産です。もし資産の大半が現預金であれば「多いほうがいい」とも言えますが、そうではなく、お金に換わる前の商品や売掛債権が多いということは、決して良いことではありません。実際には売上に対する比率で判断する必要がありますが、売掛債権も焦げ付けば何の価値もありません。商品も、流行が過ぎたり、新商品が出たり、あるいは時間が経つことで商品価値は下がるものですから、やはりある程度差し引いて考える必要があります。

企業の経営改善や銀行交渉の際には、貸借対照表の資産や負債の実際の内容を一つひとつ洗い出し、企業実態に合わせて「実態貸借対照表」をつくることがあります。その際は、貸借対照表に記載されている商品の数値そのものを採用することはありませんし、売掛金さえも100%の価値があるとは見なさない場合も多くあります。

したがって、売掛債権や商品が多いということは一概に「良い」とは言えません。現預金以外の資産は少なく、売上は多く。この状態こそが「資金繰りが良い状態」と言えるのです。

このような考え方を念頭に、貸借対照表をベースにした経営に転換することで、キャッシュフロー経営に近づけることができます。それはつまり、手元で実際に使えるお金を増やすことにフォーカスし、それを有効的に活用することです。利益を生まない固定資産を処分し、現金化しやすい資産を主に保有することで、いざというときにも対応できる、黒字体質の企業をつくっていくことができるのです。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP