経営者の賃金たる利潤

経済学でしばしば用いられる限界理論においては、市場における時間の経過とともに、需要と供給の均衡点で価格が決定されます。この均衡点より高い価格水準では供給サイドに生産増加と新規参入が生じ、需要サイドでは消費削減が生じるため価格下落圧力が加わります。逆に均衡点より低い価格水準では供給サイドに生産削減と市場撤退が生じ、需要サイドには消費増加が生じるため価格上昇圧力が加わります。

要するに、均衡点では「利潤」は存在しないことになります。新古典派の体系では、利潤は均衡点に収斂する調整機能の誤差に過ぎません。経済学においては利潤の占める正当な地位がないとも言えます。

利潤とは一体何か。経済学で必ずしも明瞭になっていなかったこの領域に「企業者の新結合」という概念を持ち込んだのは、かのシュンペーターでした。シュンペーターによれば、企業者機能の遂行である新結合こそ経済発展の駆動力であり、利潤の源泉です。彼はさらに、新結合のもたらす利潤こそ本来の利潤であり、地位なく利潤と呼ばれてきたものは「経営者の賃金」とも言うべき性質のものである、と説きました。

新結合は、その新規性のゆえに追随者を許さず、そこでは一種の独占的供給状態が生じます。この独占状態における価格決定権こそ、利潤の源泉です。言い換えればそれは、約束された見返りや保証のない状態で創造的な活動を遂行した企業者に対する報酬です。経済学は独占を嫌いますが、それは消費者余剰を失わせ、資源配分に歪みをつくるからです。しかし経営学では、逆に独占的な市場を形成することを企業努力の目標とします。

公正な企業活動によって、競争者の模倣できない基準を確立し、競争企業が参入できない独占的な市場を形成し、利潤を確保する。新古典派経済学の限界理論と均衡理論からは導き出せなかった利潤が、シュンペーターによって明瞭に説明されたわけです。

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