予算管理のムダ

組織には数々のムダが潜んでいます。最初はうまく機能していた組織も、時間の経過とともに様々なところにサビがつき、動きが鈍くなっていきます。組織がサビつくと、意思決定や実行のスピードが落ち、時代の変化についていくのが難しくなります。いかにサビを取り除いて組織を身軽にしていくか。それが組織のリーダーに課せられた役目の一つです。

組織の動きを鈍くするもの。その最たるものは「予算管理」でしょう。予算がなければ企業は活動できません。その意味で予算管理そのものは必要であり、ムダなものとは言えません。しかし実際には、現状の予算管理のやり方が大きなムダを生んでいることが多々あります。

官僚組織では仕事の量に関係なく、毎年一定の割合で職員数を増やしていこうとします。そこでは必要性に関係なく、予算があればあるだけ仕事がつくられます。これを「パーキンソンの法則」といいますが、この法則は実は一般企業にも当てはまります。こうした事態を引き起こす原因の一つが、前期予算実績に基づいて策定される「増分主義」の予算計画です。増分主義では、前期の予算と実績をベースにして「前期比で〜%増」というように予算を決定していきます。

こうなると多くの人が、次期の予算を多く獲得するには当期の予算をとにかく使いきって、まだ足りないことをアピールした方がいいと考えます。こうした予算決定の仕組みを考慮すれば、各部署のマネージャーがムダな仕事に予算を使うのも無理からぬことです。

一般的な予算管理がムダを生み出す構造になっているのは、予算管理の本来の目的から外れて、管理のための管理になっているからです。予算管理を分析すると、その目的は

  • 戦略を実現する
  • 管理を容易にする
  • 利益を確実に得る
  • やる気を引き出す

の4つに集約されます。これらの目的につながらない予算管理は、どこかに問題があるはずです。

各部署が予算確保のために行うムダは、「戦略を実現する」と相反する行為です。また、予算計画策定のために何ヶ月も要するような状況は「管理を容易にする」という目的ともずれています。こうして、まさに本筋から外れたところで、予算管理に時間と労力を費やしている例は少なくありません。

だとすると、間違っているのは予算管理ではなく、予算管理のやり方ということになります。そもそも予算管理の4つの目的を満たせるならば、現在のやり方に固執する必要はありません。すなわち、戦略を実現し、管理を容易にして、利益を確実に得て、やる気を引き出すことができる。これらが可能であれば、別の管理手法を取り入れてもいいわけです。

予算があればあるだけ使ってしまう「パーキンソンの法則」への対策としては、ZBB(Zero-Base Budgeting:ゼロベースバジェッティング)が有効です。

従来の増分主義では、「前期はいくら使ったから」という予算実績が根拠になり、今期の予算が決まります。これでは市場環境が変化してある業務が不要になったとしても、不要な業務に予算がつくことになります。そこでZBBでは過去の予算を一旦白紙にして、ゼロから「この業務は必要か」と考え、予算をつけていきます。このやり方を活用すれば、誰も必要としていないのに慣例としてなんとなく続いている仕事を排除していくことが可能です。

加えて、各部署の予算にバッファを置くことがムダな仕事の温存につながるならば、バッファを上位組織に集めてもいいでしょう。5つの部署に200万円のバッファを置くより、それらをまとめて本部が1000万円のバッファを持つのです。そうすると各部署の予算がスリムになるだけではなく、万が一の備えとしてバッファも維持できます。全部署が予算オーバーすることは考えにくいですから、本部のバッファは1000万円も要らないかもしれません。そうなれば予算全体をスリム化することもできます。

このように、従来の予算管理にこだわらなければ、様々なやり方が可能です。今までと同じ(楽な)仕事をしていたいんだ!といった組織内でのフリーライダー問題が発生することもあるでしょうが、それはまた別の話です。予算管理とはこういうものだと決めつけず、柔軟な発想でマネジメントしたいところです。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP