リスクからの財務戦略

「リスク」には様々な表現方法があります。一般的には「危険性」と訳されていますし、統計学上の「分散」と同義とする考え方もあれば、「予想以上の事態が起こり得ること」という表現の仕方もあります。財務戦略の枠組みを理解するためには、まずこれらの意味を理解する必要があります。

我々は生活の中で様々な予測を立てています。雨が降りそうだと思えば傘を持って出かけますし、月末に忙しくなりそうだと思えば月初から仕事を前倒しにするでしょう。予測は過去の経験やデータに基づいて立てられます。多くの場合、過去こうであったから将来は多分こうなるだろう、といった具合に決められるでしょう。

しかし当然のことながら、予測は当たることもあれば当たらないこともあります。また、当てやすい物事もあれば、当てることが難しいものもあります。この2つを区別するものが何かを理解すれば、リスクとは何かを理解することができます。

予測を難しくする原因は、

  1. 関連する過去のデータ(標本となるデータ)が少ないこと
  2. 過去のデータの分散の幅が大きいこと

の2つに集約されます。関連するデータが乏しければ当然に予測の精度は落ちますし、また過去のデータの分散が大きい場合には、将来のデータの分散も大きくなると予想され、それに伴い将来の予測も困難となります。

事業を行うということは、国債を購入するのとは訳が違います。元利の支払いが保証されている無リスクの投資とは違い、従業員を雇ったり事務所を借りたりすることによる出費を、事業で取り戻す保証など誰もしてくれません。それでも人が無リスクの投資ではなくリスクを伴った事業に投資するのは、リスクを取った分だけ余計に収益が見込まれ、その後の事業活動を続けられる原資となるからです。しかし、どこまでのリスクがどの程度の収益(リターン)に見合ったものかを正しく判断することは、容易ではありません。

予測は困難であり容易ではないものの、上述した2要因を把握し考え続けることは、決して意味のないことではありません。

リスクという言葉を正しく理解し、リターンとの関係を把握することからの財務戦略が、予測困難な将来に対する判断基準の軸となります。総じて言えば財務戦略とは、リスクとリターンの釣り合いを適正に保ち、事業に必要な資金を円滑に回していくための考え方の枠組みなのです。

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