金融機関の収益を改善するために

金融機関に求められる機能として、企業の価値向上、経済の持続的成長、地方創生への貢献などが強調される昨今ですが、今回ここでは金融機関自身の収益構造を考えてみます。金融機関の顧客である中小企業を基準に、長期的な関係からどのように収益を得るかという構造を改めて見直すことは、冒頭に掲げた目的遂行のためにも、これから非常に重要になっていくことです。

事業金融での収益を生みだす構造を分解してみますと、以下の5つの要素が挙げられます。

  1. 資金利益・・・貸付利息などの資金運用益から、預金利息など資金調達用費用を差し引いたもの
  2. デフォルト損失(引当分含む)・・・債務者の破綻による利払いや元本の支払不履行分
  3. 保全回収・・・デフォルト発生時の保全による回収分
  4. 営業経費・・・人件費、物件費、システム関連費用等
  5. 役務益・・・為替手数料等の非金利収入

言うまでもなく、ここで収益にとってのプラスは1:資金利益、3:保全回収、5:役務益、マイナスは2:デフォルト損失、4:営業経費です。

これらの要素は、相互に有機的な相関関係を持っています。ある収益の構成要素に対して個別に極大化、極小化を図ったとしても、別の構成要素にマイナスの影響を与えてしまい、全体として見れば最終的な収益のバランスが崩れてしまうことになります。具体的に、どういうことが考えられるでしょうか。

たとえば、営業店への人員シフトにより営業経費を削減したとします。それがすべてにおいて好材料になるかと言えばもちろんそうではなく、その一方で本部の支援機能が低下し、逆に顧客の離反が発生して資金利益が減少する、といったことが十分にあり得ます。他にも、信用リスク管理を強化しようとモニタリングを強化したものの、営業の時間が犠牲となって貸出が伸び悩み、資金利益が減少するといったことも考えられるでしょう。こうして具体的に考えてみれば、これら要素は相互的に結びついていますので、総合的に見てバランスを考慮する必要があることは明らかです。

ここで、収益向上のため少し視点を変えて見てみます。これらの要素のうち「資金利益」「役務益」の2つは、顧客である中小企業側の、損益計算書の裏返しでもあります。

金融機関における資金利益は、中小企業側にとっては金融仲介という機能を果たしてもらったことへの分け前として、金融機関側に「金利」として支払われます。また金融機関における役務益は、中小企業が行う事業を支援する決済機能や情報の提供に対して、金融機関側に「手数料」として支払われるものです。

つまり、顧客である中小企業は、自社事業が金融機関から受け取る貢献度合いに対して、支払ってもよいと思う範囲で、「金利」や「手数料」を支払う、と見ることができます。したがって、金融機関の中にいて、金融商品や業務の基準で考え、収益の極大化をどれだけ考えていても限界がある、ということです。

中小企業の視点で考え、ここに上げた利益を構成する5つの要素のそれぞれの理想形を、長期的な視点で考えていくこと。そういった目指すべき理想に向けて現実的に必要となるのは、中小企業経営者との接点を、可能な限り増やしていくことではないでしょうか。中小企業のリアルな現場における視点、経営者の率直な実態をヒアリングすることの重要性は、いくら強調してもし過ぎることはありません。

我々会計事務所は月次決算を通じ、最も中小企業の現場を知り、変化を感じ取ることができる立場にあります。そこに金融機関と会計事務所との提携の必要性があると言えるでしょう。

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