短期の資金繰りを見える化する【流動性】

資金の流れをコントロールする「資金繰り」。短期の支払能力というのは企業の死活問題であり、悩みの種とする企業も多いのではないでしょうか。またそれはキャッシュを増やそうと売上ばかりを追っても、解決できるものではありません。

⇛【ご参考】売上の伸びと資金繰りのバランスを考える

そういったキャッシュフローを示す指標が、この「流動性」です。分析に使われる指標として代表的なものは、流動比率当座比率現金預金比率。以下、具体的に数字で確認してみましょう。

流動比率当座比率現金預金比率を順に確認してみてください。流動比率は上昇傾向ですが、当座比率現金預金比率は減少傾向です。つまり結局、どういうことでしょうか?・・・すべてを統合して算出しなければ一概には言えません。SPLENDID21にて流動性関連数値をまとめ上げると、以下のようになります。

コジマ2003年〜2007年流動性チャート

この流動性チャートにより、一目見て赤色領域にはなく、総じて良好な状態にあり、また改善傾向であると判断できるようになります。ただしこれは、流動性だけを見た結果ということに注意しなければなりません。経営に求められるのは全体のバランスです。


「全体的バランス」について理解を深めるためにもう一例、まったく別な企業を挙げます。2007年〜2011年の大王製紙株式会社です。流動性に限定せず、全体として総合力を示す経営チャートから見てみましょう。

大王製紙2007年〜2011年の経営チャートです

ゆるい下降傾向ではありますが、青色領域(安全領域)です。この背景には営業効率の悪化も強く影響していますが、ここでは流動性と、関連指標として安全性にフォーカスして確認します。

大王製紙2007年〜2011年の流動性チャートです
大王製紙2007年〜2011年の安全性チャートです

まず流動性・安全性2つの主要チャートをみれば、流動性は良く、安全性は悪い、ということが直感的にわかりますね。安全性は5年連続赤色領域にありますので、少し問題がありそうです。数字を深掘りして見てみましょう。

固定比率は、自己資本(返済不要なお金)を、(資金が寝てしまう)固定資産に投入した割合です。教科書的には100%未満が望ましいとされますが、特に多額の設備投資と運転資金を必要とするような大手企業では、固定資産全額を自己資本で賄うというのは現実的ではありません。そこで資金調達も含めて考えようというのが、固定長期適合率です。

固定長期適合率は、長期資金(自己資本と固定負債)を、固定資産に投入した割合です。これは「固定負債も含め100%未満」ということになりますので、財務戦略も考慮した資金調達度合いを示します。固定比率より強く100%未満が求められますが、大王製紙のこの時期はそれを達成しています。

大王製紙2007年〜2011年の安全性指標です

固定比率が悪く、固定長期適合率が良い。これは明らかに、固定負債の金額の多さから来るものです。大王製紙2011年の自己資本比率は18.95%でした。これは総資産に占める自己資本(純資産)の割合です。総資産のうち、18.95%が自己資本。ということは、残りの81.05%は負債です。それはつまり、資産の8割が借入金などで調達されていることを示します。

有利子負債額の推移を見てみましょう。

2011年の売上高は4,101億円ですが、それに対して4,516億円の有利子負債を抱えていることになります。経常利益額は55億円ですので、仮に55億円の利益を元手に借金を返済しようとすると82年かかるわけです。これが、安全性が赤色領域に落ち込み続けている直接的原因ということがわかりました。

2007年〜2011年の大王製紙は、総じて経営チャートも悪くはなく、流動性は「良い」という分析結果でしたが、安全性をこうして深掘りしてみると、決して安心できる状況ではないということがわかります。長期資金繰りである安全性が企業の総合力に及ぼす影響は、根深いものがあります。現金預金が1,301億円あるからと言って、決してキャッシュが豊富とは言えません。借金してお金があるだけです流動性が青色領域だからと言って、単純に「良い」とは判断できないということが、この事例から明らかです。

資金繰り表や財務分析によって資金繰り状態を確認し、キャッシュフローの状態だけ見れば安心のようであっても、全体としてどんな問題を抱えているかは数字単体でわかるものではなく、相互関連性から読み取る必要があるのです。

以上、短期資金繰りを示す流動性のご説明でした。

⇛相互関連性から全体のバランスを知り、安心して経営に専念するために。

 

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